モノを捨てて心を豊かに

身の回りの整理を始めた方に共通した感想が、
 
「片付ける作業によってモノが少なくなる一方で、
精神的には逆に豊かになった」という言葉です。

 
モノにはそれを所有する人の意識が宿っており、
家の中にあるモノや、服装などを見れば、
何となくその人の性格や意識というものを
感じることができるのです。

 
過去から現在までに至る
何年も溜め込んだモノの集大成が、
その家が放つ独特の生活感というものであり、
 
それはとりもなおさず、
住む人自身の生活意識そのものと言える筈です。

 
 
いらないモノを捨てていくことは、
残された家族の負担を軽減させる作業であることは
言うまでもありませんが、
 
それ以上に、これから先の自分自身が、
精神的に豊かな日々を送るために
もっとも重要なことなのです。

 
モノに対して執着を持つことは、
過去の自分への執着心に他なりませんから、
捨てる作業は執着心を手放すと同時に
心を解放することにも繋がります。

ものごとには必ず入り口と出口があります。
たとえば、電車やバスなどでは
下りる人が先で乗る人は後であり、
エレベータも誰かが出なければ次の人は乗れません。

 
家であれば、不要なモノを捨てなければ
本当に必要なモノが入るスペースはありませんし、

心も同じであり、執着心をまず捨てなければ
新しい価値観も生まれないのです。

 
 
一見、モノを捨てることで
何かを失ってしまうように思いがちですが、
実は捨てることによって得るものが
思いの外たくさんあることを 
 
私たちはモノを捨てることによって気づくのです。

自分が溜め込んだモノ

自分が死んだ後には、
ほとんどのモノが不要となることが普通です。

仮に子供や孫などが居たとしても、
それぞれが自分の家庭を持っている場合、
家財道具などはすでに揃っているのですから、
彼らに譲るものなど特には無いはずです。

だいいち、今の若者が年寄りの使っていたモノを
欲しがるはずもありませんし、
よほど骨董価値のあるモノでない限り、
すべて廃棄されると思って間違いありません。

自分の死後、引き続き誰かが家に住むのであれば、
当人に「何を残しておくのか」という相談も必要ですが、
誰も住まないという場合は、
かなりの家財道具などの廃棄処分が必要になります。

そういったことを遺族にまかせるということは
手間とお金が掛かる大変な作業となりますので、
できれば自分の手で生前に
少しづつでも処分しておきたいものです。

そして、そのためには
「気力」「体力」「時間」というものが
まだ残っているうちに始めたいのですが、

「どれも残っていない」とおっしゃるならば、
家族などに協力を仰ぐか、もしくは
業者に任せるという方法をとるしかありません。

大きな家具などはさておき、あなたの家の中には
膨大なモノが溢れているだろうと想像します。

そりゃあ数十年かけて溜め込んできたわけですから、
これを整理しようと思えば、
気が遠くなるのは当たり前です。

とは言っても、
残された者がやるのか?、自分がやるのか?という、
ふたつの選択肢しかないのですから、
やれるだけのことは自分で頑張るしかありません。

やはり、自分で溜め込んだモノは自分の手で、
生きている間に片付けておくべく仕事だと思います。

なぜならば、「そのモノ」が家に存在しているのは、
あなたのせいだから・・・。

それらを集めて来たのは、アナタ自身なのですから、
それを他人に片付させるということは
甚だ自分勝手で迷惑なことだとは思いませんか?

もちろん、あなたが亡くなってしまえば、
誰かが「感情抜き」ですべてをゴミ箱に捨てたり
業者に任せて捨てることはできるでしょう。

しかし「何故それがこの家に存在するのか?」という、
あなたの過去の感情とは無関係に、
家に存在していたモノがゴミとして扱われてしまうことは、
とても残念な気がします。

家を整理していると、「あ、これはあの時に買ったんだ」
などと、一つ一つのモノに、昔の思い出が宿っている筈。

そんな思い出のモノとひとつずつ決別していくことこそが、
自分なりの「身終い」に繋がるのでは無いかと思います。

親にモノを捨てさせる方法

「高齢の親が、モノを捨ててくれなくて困っています。
捨てさせる方法はないでしょうか?」

セミナーの受講者から、こんなご相談をいただきました。

高齢者がモノを溜め込むことは珍しいことではないため、
片付けたいと望む家族と揉めることは良くあることです。

いらないモノは捨てて欲しいのですが、
何度言ってもなかなか納得してくれないことは、
家族にとっては非常に悩ましい問題ではあります。

高齢の親世代がモノが捨てられない理由として、
子供世代との価値観の違いがあります。

高齢世代の方が若い頃の教育においては
「贅沢は敵、質素倹約は美徳」として教えられ、
戦後、モノがない時代を生きてきた世代にとっては
モノは大切にという意識が強く刷り込まれています。

今でこそ欲しいものはすぐに手に入りますし、
100円均一に行けば、今必要だと思わなくても
ついつい「便利そうだから、安いからついでに」と
カゴに入れてしまうような
大量のモノで溢れかえる時代においては、
「モノが無かった時代」のことなど
子供世代の人たちには想像出来る筈もありません。

世代間の価値観の違いは変えようもありませんが、
ある程度は親に納得して捨ててもらわないと
モノが増えすぎて始末に負えないという悩みは、
確かに深刻なのかもしれません。

ただ、モノを溜め込むという理由が
単なる価値観の問題であればまだ良いのですが、
中にはストレスによる原因もあるため、
注意が必要な場合もあります。

ストレスや社会的孤立による寂しさから物を溜めてしまうのは
年齢に関係なく、どの世代にも共通していることですが、
具体的な症例としては「強迫性障害」という精神疾患があります。

強迫性障害を患うとモノへの執着心が強くなり、
捨てられなくなったり、溜め込んでしまうといった症状が見られ、
特に一人暮らしの高齢者や独り身の人に多いのが特徴です。

では実際に、どうすればモノを捨てるようになるのかというと、
親の所有するモノの片付けの場合は、
時間をかけて少しずつ整理していくことが重要です。

本人の知らない内に「不要だから」と勝手に捨ててしまうと、
本人の自尊心が傷つくだけでなく、
自刎にとって貴重なモノ、思い入れのあるモノを捨てられると
大喧嘩になる恐れがありますので注意しましょう。

また、基本的に「捨てて」や「ゴミでしょ」とか「邪魔だから」
「いらない」といった言葉は極力言わない方が良いです。

高齢者の心を傷つけないように本人に納得してもらってから、
どれを残してどれを捨てるのかを判断してもらいながら、
時間をかけて整理していくことが重要となります。

ちなみに、オススメの方法としては、
親のプライベートな空間はいっさい触らず、
共用の部分である居間、台所、トイレ、風呂などを
綺麗に掃除したりモノを減らすことからスタートし、

きちんと整理された空間が「整頓されて綺麗になった」と
親が喜んでくれるのを見計らって、
「モノを片付けるときれいになるでしょう!!」と
少しずつ、モノを減らして片付けることの良さを本人が意識し、
納得させるように仕向けることが成功の秘訣です。

また、周囲が面倒くさそうに片付けをしているのではなく、
楽しそうにやっている様子を見せながら、
「いらないものがあったら言ってね。一緒に手伝うから」と
声を掛けることで、親もなんとなくつられて
「じゃあ、これも一緒に捨ててくれ」と、
少しずつ処分し始めることがあります。

なにはともあれ、周囲が心がける一番の重要なことは、
片付けるという作業を「ウキウキと楽しんでやっている」
という姿を見せることによって、

「そんなに楽しいことなら自分も一緒に・・・」と、
親の方から能動的に動き出すように仕向けることが
片付けを成功させるための秘訣です。

家の片付けは大変

「生前整理」は、もちろんモノの整理ということが中心ですが、
もう一つの側面として、自分がこの世を去った後で
モノの整理や相続問題で家族が困らないように、
身辺においての整理をしておくという意味合いを持っています。

「生前整理」と似た言葉で「遺品整理」がありますが、
生前整理がその本人が生きている間に、自分がするのか、
本人の死後、家族によって行われる遺品整理では、
少々意味合いが異なります。

今日は、自分の手で片付けや整理をすることが
どうして必要なことなのか?ということを、
少しお話ししてみたいと思います。

 

皆さんが今どのような状況で生活していらっしゃるのか?

お子さんたちと同居なさる方・・・
お子さんたちと離れて生活なさる方・・・
配偶者とお二人で暮らす方・・・
お一人暮らしの方・・・
それぞれに状況は異なることとは思いますが、

あなたが亡くなった後、遺族があなたの遺品を、
必要なもの、不要なものを分けながら片付けるという作業は
想像を遥かに超えた大変な作業だということを、
まずは認識する必要があります。

私も仕事上、何度も「遺品整理」の現場に
立ち会わせていただいたことがありますが、
それはもう大変な作業であることを痛感させられました。

何も片付けをしないで亡くなった場合、
その家を片付けるという作業に一週間以上掛かるものです。
近くに暮らす遺族であれば問題ないのでしょうが、
遠距離で暮らす遺族であった場合は大変な作業となります。

一軒の家にある大量の「モノ」をすべて処分しようとした場合、
平均的な家庭でおよそ2トントラックで6台から8台もの
家具や調度品、また残すものやゴミとして捨てるべきものなど、
大量のモノを家の中に溜め込んでいたことに驚かされます。

家の中のモノを全部処分するということを前提で考えれば
専門業者の方に「全部処分して下さい」とお願いすれば、
お金は掛かるものの簡単なことなのですが・・・
いきなり業者の方に丸投げするにはいかない
さまざまな「事情」があるのです。

何故かというと、家の中には大切なものや貴重品が存在しており、
たとえば、タンス預金などの「現金」や、
銀行等の「通帳」「証券類」「権利証」、
「骨董品」や「貴金属」などの金目のもの、
「アルバム」や「手紙」「日記」等の
残しておくべき大切なものがあるため、
まずは遺族が家の中をくまなく調べ尽くしてからでなければ
業者にお願いするという運びにならないのです。

遺品整理をなさるというご遺族にお付き合いしたところ、
亡くなったお母様の自宅を片付けるということで
遠方からのご兄弟も集まって作業が進む中、

途中で古いアルバムやお母様が書かれていた日記などを見つけ、
ご家族が懐かしい想い出話を始められる度に作業が中断し、
一向に片付けが進まないという状況を見るにつけ

恐らく、一般的な家の遺品整理の場合、
残すものと捨てるものを仕分けするという作業だけでも、
かなりの日数は掛かるだろうと想像するとともに、
遠方からの遺族がこの作業をするためには
時間と労力、そして経済的にも
かなりの負担を強いられることは間違いありません。

ですから、皆さんが家族のために
「生前整理」をしておこうと思われる際には、
まずはモノの絶対数を減らす(捨てる)ことと、
残された遺族にとって「絶対に必要なもの」と
「必要かも知れないもの」を、
すぐに分かるようにまとめておくことが何よりも重要であり、
それが、ひいては遺族にとって、有り難いことだということを
認識していただきたいと思うのです。