親にモノを捨てさせる方法

「高齢の親が、モノを捨ててくれなくて困っています。
捨てさせる方法はないでしょうか?」

セミナーの受講者から、こんなご相談をいただきました。

高齢者がモノを溜め込むことは珍しいことではないため、
片付けたいと望む家族と揉めることは良くあることです。

いらないモノは捨てて欲しいのですが、
何度言ってもなかなか納得してくれないことは、
家族にとっては非常に悩ましい問題ではあります。

高齢の親世代がモノが捨てられない理由として、
子供世代との価値観の違いがあります。

高齢世代の方が若い頃の教育においては
「贅沢は敵、質素倹約は美徳」として教えられ、
戦後、モノがない時代を生きてきた世代にとっては
モノは大切にという意識が強く刷り込まれています。

今でこそ欲しいものはすぐに手に入りますし、
100円均一に行けば、今必要だと思わなくても
ついつい「便利そうだから、安いからついでに」と
カゴに入れてしまうような
大量のモノで溢れかえる時代においては、
「モノが無かった時代」のことなど
子供世代の人たちには想像出来る筈もありません。

世代間の価値観の違いは変えようもありませんが、
ある程度は親に納得して捨ててもらわないと
モノが増えすぎて始末に負えないという悩みは、
確かに深刻なのかもしれません。

ただ、モノを溜め込むという理由が
単なる価値観の問題であればまだ良いのですが、
中にはストレスによる原因もあるため、
注意が必要な場合もあります。

ストレスや社会的孤立による寂しさから物を溜めてしまうのは
年齢に関係なく、どの世代にも共通していることですが、
具体的な症例としては「強迫性障害」という精神疾患があります。

強迫性障害を患うとモノへの執着心が強くなり、
捨てられなくなったり、溜め込んでしまうといった症状が見られ、
特に一人暮らしの高齢者や独り身の人に多いのが特徴です。

では実際に、どうすればモノを捨てるようになるのかというと、
親の所有するモノの片付けの場合は、
時間をかけて少しずつ整理していくことが重要です。

本人の知らない内に「不要だから」と勝手に捨ててしまうと、
本人の自尊心が傷つくだけでなく、
自刎にとって貴重なモノ、思い入れのあるモノを捨てられると
大喧嘩になる恐れがありますので注意しましょう。

また、基本的に「捨てて」や「ゴミでしょ」とか「邪魔だから」
「いらない」といった言葉は極力言わない方が良いです。

高齢者の心を傷つけないように本人に納得してもらってから、
どれを残してどれを捨てるのかを判断してもらいながら、
時間をかけて整理していくことが重要となります。

ちなみに、オススメの方法としては、
親のプライベートな空間はいっさい触らず、
共用の部分である居間、台所、トイレ、風呂などを
綺麗に掃除したりモノを減らすことからスタートし、

きちんと整理された空間が「整頓されて綺麗になった」と
親が喜んでくれるのを見計らって、
「モノを片付けるときれいになるでしょう!!」と
少しずつ、モノを減らして片付けることの良さを本人が意識し、
納得させるように仕向けることが成功の秘訣です。

また、周囲が面倒くさそうに片付けをしているのではなく、
楽しそうにやっている様子を見せながら、
「いらないものがあったら言ってね。一緒に手伝うから」と
声を掛けることで、親もなんとなくつられて
「じゃあ、これも一緒に捨ててくれ」と、
少しずつ処分し始めることがあります。

なにはともあれ、周囲が心がける一番の重要なことは、
片付けるという作業を「ウキウキと楽しんでやっている」
という姿を見せることによって、

「そんなに楽しいことなら自分も一緒に・・・」と、
親の方から能動的に動き出すように仕向けることが
片付けを成功させるための秘訣です。